鍼と灸の使い分け
鍼とお灸はどちらが効く?
施術中に質問されることがあります。「鍼とお灸どちらが効くんですか?」と。素朴な疑問として聞かれているのだとは思いますが、私としては「両方です。」という一言になってしまいます。一言で答えてしまうのもぶっきらぼうですので、あーだこーだと説明します。
どちらが効くかよりも、どう使い分けているかをお話することのほうが鍼灸をより理解していただけるのではないかと考えました。
どんな時に鍼を用い、どんな時に灸を用いるのか。
確かに、同じツボへ鍼を行い、灸も行います。
ただ、鍼や灸をしてはいけませんよと禁止させているツボ(禁鍼穴、禁灸穴)はそれぞれにあります。わかりやすいところでいえば、乳首の中央にある「乳中」というツボ、ここは鍼も灸も禁止されています。(禁鍼穴、禁灸穴)
ツボに対して鍼とお灸をどのように使い分けているのか、私なりの基準をお話します。
鍼灸師のスタイル
その前に鍼灸師が皆、同じように鍼とお灸を使い分けているわけではないことをお伝えします。鍼灸に対する思想、流派などによって鍼や灸の使用方法や頻度も異なります。
鍼だけを用いる鍼灸師もいれば、灸だけを用いる鍼灸師もいます。鍼灸師の考え方次第で鍼と灸は自由に使い分けができます。
2.鍼を主に用いて、灸は補助的に用いる
4.灸を主に用いて、鍼は補助的に用いる
鍼灸師を大きく分類すると、この4つのスタイルが考えられます。そして、大事なことはこの4つのスタイルに優劣はないということ。それぞれのスタイルで症状の改善に貢献している鍼灸師は存在します。
私の場合は、
4.灸を主に用いて、鍼は補助的に用いる
↓
2.鍼を主に用いて、灸は補助的に用いる
このようにスタイルを変化させました。このスタイル自体に優劣はありませんが、身体のとらえ方や鍼灸技術の変化に伴って今のスタイルがベストと考えています。
鍼と灸の使い分け
私が鍼と灸の使い分けを決めるときに考える基準は、
『ツボの深さ』と『冷え』です。
腰やおしり、太ももなど筋肉が厚くツボが深い場所にある場合は鍼の方が便利です。一方、冷えが症状と関係しているときには灸を用いると効果が上がります。これらもケースバイケースで、すべてに当てはまるわけではありません。
それ以外の場合は鍼でもお灸でも良いと思いますが、それぞれの得意分野や注意すべき点を考えて私は鍼を主に用います。
鍼のメリット
・深い場所のツボへ刺激ができる
・鍼先の感触からツボの変化(硬いツボが柔らかく変化した)がわかる
・短時間の施術
・わずかな刺激で身体が変化する(体の負担が少ない)
施術する側としては、ツボの状態をリアルタイムで確認することができる点が鍼を使用する上でのメリットです。ツボ(コリ)に鍼先が当たれば、コリの硬さが変化することを鍼を通して術者は感じ取ることができます。ツボに変化を起こせれば、体も変化していることになります。
上の図は皮膚の下、筋肉中にあるツボ(コリ)を表しています。ツボAは表層にあり、ツボBは深層にあります。ツボBに対しては鍼を用いることで、ダイレクトに刺激を与え、そのツボの状態を鍼を通じて感じ取ることができます。
受け手としては、短時間で身体に変化が起こり、症状の改善につながることがメリットと言えます。また、体にかかる負荷が大きい施術(一部の整体やマッサージ療法)が苦手という方にとっても鍼の刺激は最適です。
灸のメリット
・冷えに起因する症状に対して有効
・刺激が心地よい
・セルフケアとして用いることができる
冷えが原因の肩こりや腰痛などに灸を用いると有効です。お灸にも種類がありますが、直接皮膚に行う「透熱灸」を当院の施術では用います。米粒よりも小さいものですから、熱さを感じるのも一瞬です。もぐさの大きさや硬さで熱さを調整し、体の負担の少ない「アツキモチイイ」程度のお灸を行います。
また、台座灸を用いればセルフケアとしてご家庭でもお灸ができますので、ご自身でのケアを希望される方には鍼灸師がツボに印をつけています。
まとめ
鍼とお灸の使い分けは、鍼灸師個人の判断によるところが大きいと言えます。鍼のツボ、灸のツボと決められているわけではありませんので、流派や考え方によって鍼とお灸の選択が行われています。
私の場合は、ツボが深いところにある場合は「鍼」を、症状と冷えが関係している場合は「灸」を使用します。これらの条件以外のツボには基本的に鍼を用いて施術を行います。
鍼灸院めぐる 院長
2010年「鍼灸整骨院めぐる」を開業。同年、活法に出会い衝撃を受ける。2016年に根本的な施術を目指し保険での柔道整復施術を停止する。「鍼灸院めぐる」に改名。スタッフと2名で鍼灸専門として日々奮闘中。気ままなブログ「はりパパ日記」もたまに更新中。
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